CODEN : HIKGE3
ISSN 0916-0930
2014
VOL. 30
2
日立金属技報 Vol. 30(2014)
 表紙写真は,電子線後方散乱回折装置(EBSD : Electron Backscatter Diffraction)
より測定した Alloy718 の結晶粒界像である。青色の境界線は方位差 15°以上で定義
した結晶粒界,赤色の境界線はΣ 3 の対応粒界(双晶境界)であり,熱間鍛造によっ
て得られた微細結晶粒組織の一例を示している。補足図 A は,表紙写真の結晶粒界
像における結晶粒径の分布を示しており,平均結晶粒径が約2μmの微細結晶粒
組織であることがわかる。微細結晶粒組織は,結晶粒成長を抑制するピンニング粒
子として利用されるδ(デルタ)相の析出温度域で熱間加工を施し再結晶を発生させ
ることで得られる。補足写真 B は,結晶粒とδ相を示した SEM(Scanning Electron
Microscope;走査型電子顕微鏡)による反射電子像であるが,結晶粒が非常に微細
であるため,光学顕微鏡あるいは,SEM による観察では粒界が明瞭に判別できない。
方でEBSD では結晶情報から測定するため微細結晶粒の粒界の判別や結晶粒サ
イズの分布,粒界性状ごとの定量評価が可能である。
 Alloy718 は 1950 年代に開発された鍛造用超合金で,現在でも主に発電用ガスター
ビ��や航空機エンジンの用途に多く使用されている。疲労やクリープ等,用途に応
じた強度特性を発揮するためには,熱間加工によって結晶粒サイズをコントロール
することが重要であるため,鍛造シミュレーションによる再結晶組織を予測する技
術が研究されている。特に,高い疲労強度を得るためには微細な結晶粒組織が要求
されるため,熱間加工プロセスの適正化が重要となる。EBSD による解析は,微細
な再結晶組織を定量評価する上で欠かせない手法である。日立金属は,微細再結晶
組織の評価技術と予測技術を熱間加工プロセスの設計に反映させることで航空機・
エネルギー産業に貢献していく。
表紙写真説明
【補足図 A】
EBSD による結晶粒径の分布
【補足写真 B】
SEM 反射電子像
【表紙写真】
EBSD による結晶粒界像
5 μm
Area Fraction
Grain Size (Diameter) [microns]
0.1
0
0.05
0.10
0.15
1 10
5 μm
結晶粒
δ相